« 興味がありません | トップページ | イメージ先行 »

2009.10.24

凄い本ですよ、コレは


北欧神話と伝説 大きくは第一部「神話篇」と第二部「サガと伝説篇」の二部構成で、北欧神話周辺をチェックしたことがある人であれば「コンパクトにまとめてるのね」という印象を受けると思いますが、それだけではありません。

500ページ足らずの文庫本なので、第一部と第二部を個別にみると、端的には既知の事柄ばかりで、逆に「あれが足りない、これが足りない」と思いそうなところですが、限られたページの中での取捨選択が極めて要領を得ています。

「サガと伝説篇」では、鍛冶ヴェールンド(ウェイランド)、ハムレット、シンフィヨトリなど、後年の作品(小説、オペラ、バレエ等)でも著名な人物とその一族をテーマにしているのですが、そこに一貫しているのが名誉と復讐。

「復讐なんて無益よ!復讐は次の復讐を生み出すだけだわ!」という現代的クレバーな意見は全く登場しません。

例えば、ヴォルスング家のシグニイは、仇の妻になるという屈辱の中で、唯一の生き残った兄弟であるシグムントと同衾してシンフィヨトリを産みますが、この辺りは「ニーベルングの指輪」と異なり、その近親相姦に「愛」という言葉は無縁。

シグニィの狙いは、ヴォルスングの血を濃く受け継ぐ強い子を得て復讐の手段とすることでしかないのです。

現代人が読むと、何故そこまで名誉と復讐に拘るのかという疑問が湧きそうなものですが、そこで活きてくるのが「神話篇」。

北欧神話は、一見破天荒な神々の荒くれぶりが目立ちますが、未来にはラグナロクという暗い未来が待ち受けています。

様々な二つ名を持つ主神オーディンですが、「勝利を決める者」でもある彼は、巨人族との最終決戦に向けてワルハラに多くの英雄を確保する必要があるため、王や諸侯達の間に、意図的に不和を作り出します。

復讐が復讐を呼ぶ構造は、まさにオーディンの意図するところであり、現世では仇同士であった家柄でも、名誉が保たれていれば、死後においてワルワラの饗宴に参加する資格を得て、ラグナロクでは共通の敵と対峙することになるのです。

神話と、それに続く形で形成された伝説の結びつきは、各論的に語られるものは目にしますが、「北欧神話と伝説」はそのタイトルの額面どおりの構成で、北欧神話を全く知らない人から、各論から興味を持った人まで、幅広い層で愉しめること請け合いです。

|

« 興味がありません | トップページ | イメージ先行 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

グレンベックで、山室静先生の訳本ですよね。
9月に出版社も新潮社から講談社に移り、文庫化したんですね。
中身は変わっていないんでしょう、きっと。
出版されてから随分長い時間が経ってますが、何故、今の時期なのか…
こういう本はもっと早く文庫化してもらいたかったです。

投稿: garnet | 2009.10.25 13:08

流石はgarnetさん。
単行本でお読みになってるのですね。
そんなに期待してなかったので、反動でちょっと興奮気味の記事になったかも(^^)

投稿: Leon | 2009.10.25 13:23

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 凄い本ですよ、コレは:

« 興味がありません | トップページ | イメージ先行 »