魔法使いの大学から出されたゴミを食べたネズミ達の頭脳が突然賢くなった!
同じ頃に、やはり賢くなった野良ネコのモーリスは、楽士ギルドの見習い少年ケイスが笛を吹いているのを見て、一つのアイデアを思いつく。
モーリスに入れ知恵された賢いネズミ達が、台所をはじめとした場所に顔を出し、町がパニックになったのを見計らって、これまたモーリスに指示されたケイスが笛を持って登場する。
楽士の笛がネズミを操るのは周知の事実なので、町の人々は喜んでケイスに報酬を払ってネズミの駆除を依頼するという段取りだ。
町から町へ、荒稼ぎを続けてきたモーリス達だが、小さいながらも賢いネズミ達の頭脳は、やがて自分達の行いが「倫理的に問題がある」と考え始めるようになった。
既に充分な稼ぎを得ていることもあり、この奇妙な詐欺師団は最後の仕事場所としてとある町を選んだのだが、そこは既にネズミによって甚大な被害を被っていた。
しかし、賢いネズミ達が町の地下に潜り込んで調べてみると、実際には一匹のネズミも見当たらなかったのだ・・・
「ハーメルンの笛吹き男」などのグリム童話をベースに、奇想天外でユーモラスな冒険が繰り広げられる。
主役であるモーリスは巧みな悪知恵を発揮するのだが、義侠心とも言うべき高潔さも持ち合わせており、妙に「人間味」を感じさせるキャラクターだ。
ネズミ達の主だった面々も個性的で面白いのだが、特筆すべきはタップダンスの名手サーディン(*)だろう。
若きリーダーであるダークタンも、ずば抜けて明晰な頭脳を持つデンジャラス・ビーンも、恐怖や挫折に足元を救われそうになるのだが、いつもはおどけた様子しか見せないサーディンだけが如何なる境遇にあっても強い意志を見せ、その深い二面性が彼を魅力的にしている。
キャラクター達の魅力だけではなく、ネズミ不在の不思議な町を探るうちに、次第に強大な敵の姿が見えてくる謎解き風の構成も物語に引き込まれる要素だ。
最後の最後になってその姿を明らかにする”ネズミ王”は、童話「くるみ割り人形」にも登場するが、こちらの方がよりリアルで恐ろしげに描かれている。
克己や団結、更にはリーダーシップ論など、本書の主な対象である年齢層にはやや難しいテーマも内包していると思うが、この傾向は良い児童書の典型でもある。
若い読者が将来再読するときには、きっと新たな発見が待っているだろう。
ところで、デスクワールドの死神が大のネコ好きであることは、シリーズ既刊の描写でも見て取れるのだが、その理由がこの巻で明らかになったように思う。
仕事柄、相手と親しくなるほど深い付き合いを持てず孤独を囲っている死神にとって、その生涯の中で都合9回も顔を会わせるネコ達に親近感を寄せるのは当然と言えるだろう。
(*)イワシ缶。ネズミ達は賢くなって文字が読めるようになったとき、手近なゴミの山にあるものなどから自分の名前を選んだ。

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